本命チョコレート【BL】

 
「あのさ──」


 そう、祥太が切り出した瞬間、玄関の開く音がして「ただいま」と本来聞こえるはずのない声が響いてきた。


「姉貴だッ」


 声の主に危機感を覚えた俺は、目の前に祥太がいる事を忘れて思い切り立ち上がってしまった。


「──……ッ!!」


 鈍い音がして、続く痛みに俺も祥太も床に崩れて悶える。

 祥太の額あたりに、俺が思い切り頭突きを喰らわせてしまったんだ。


「二人して何やってんの」


 リビングに入ってきた姉貴が不審そうに近付いてくる。

 気まずいと思ったのも束の間、姉貴の視線は直ぐに別の所に移った。


「あっ、これお願いしたやつ?」


 姉貴はクッキングシートの脇にあるラッピングされた生チョコを手に取り、満足そうに眺めている。


「美味しそうに出来たじゃん」


 そして、残った生チョコに手を伸ばした時だ。


「ゆいちゃん、食っちゃダメ」

 素早く立ち上がった祥太が、姉貴の手を持って止めさせた。