鈍恋diary


髪が時々首筋を掠めてくすぐったい。

何度かこうやって航希が寄り掛かってきて寝ちゃったことあったけど、その時とは違う…

航希の時は、何も気にせず普通にしてたのに…

今は、身動きが取れない。

貴史君の体温とか、髪の感触とか、息遣いとか…

そんなの全部に、意識が集中したみたい。

ホントにこんな態勢のまま寝るつもりなのかな?

あたし…どうしたらいいんだろ??

電車が降りる駅に着くまでは、あと10分くらいある。

この状況での10分って、すごく長く感じそう。

なんか息も詰まりそうな気分。

貴史君も身動きしないし…

あたしもやっぱり動けないし…

電車が揺れると、髪で首筋を擽られるだけ。

繋がれた右手はもう気にならなかった。

肩に掛かる重みと、感じる温もりだけが全てみたいで…

そこから熱が広がっていくような気がした。

落ち着かない。

嫌だとか、ウザいとか思う訳でもない。

寧ろ、そう思えた方が気が楽なんじゃないかと思う。