鈍恋diary


「あ…もしかして、好きなヤツいんの?」

「あ…」

航希のことは好きだけど、そういう意味じゃないし…

でも、航希はそういう意味で好きって言ってくれてて…

あたしは、考えるって言っちゃって…

「タカ投げるのとりあえず見とこ」

「あ…はい」

答えに困ってるのわかったのかな…龍樹さん。

あたしは、ぼんやりしたまま貴史君に視線を向けた。

背はそんなに変わらなくて…

見た目可愛い雰囲気なのに、口悪くて…

嫌なヤツかと思ったら、優しくて…

人間観察なんて悪趣味なことしてるクセに、そのせいで他人のこと見透かしてる…

ひと言で言ったら、不思議な人かも。

貴史君の手から離れたボールは、真っ直ぐ転がって…

右端ギリギリのところを落ちずに10番ピンに当たった。

ボールに弾かれた10番ピンは、真横に飛んで…

「ざまぁみろ」

振り返った貴史君は、勝ち誇ったような笑みを浮かべてた。

「マジで取るとか…ホントどんだけプレッシャーに強いんだよアイツは…」

「逆境に強いし、運あるよタカ。

タツは結局いいとこ全部タカに持って行かれたね」

「別にいいんだよ…たまには可愛い弟に協力してやんねぇとな」

ストライクとかすごいって思うけど、それとは全然違う。

今のはすごいって言うより、感動…