王子様と堕姫様



”王子はいい人”


そんなの分からないじゃない。

腹の中で何を考えているかなんて、
そんなの本人しか分からない。


人を殺すような人よ、
どんな理由があろうとも誰かの命を奪った人、
そんな人がいい人だなんて、
”いい人”っていう言葉で罪が消える訳じゃないんだから。


「王子が…どうしても信じられないの…
父や母、兄を殺した王子が許せないの…」


「いつか、王子を信じられる時が絶対来る。
その時は素直になるんじゃよ…」


おじさんが話している間に戸が開く音がした。

雨の音が強く聞こえて、
そのお客さんの足元はずぶ濡れだった。


「客かのぅ…リナリア、手伝ってくれ。」



私が顔を上げた瞬間、
フワッとした感覚に包まれ、
びしょ濡れの服に驚く。

その感覚はすぐに強い力に変わり、
私はハッとする。


「離して…くだ…」


私を抱き締めるその腕はまさに王子のものだった。


「シオン…様…?」