正義のヒーロー(警察)に電話しようとしたら全力で阻止された。
阻止されるときに腕を掴まれたのがあまりに気持ち悪くてお風呂で全力で洗っていたら梔 ダンテかなぜか泣いていた。
涙脆い男は嫌いではないから嫌な気はしなくて、ついつい慰めた。
「よしよし。泣くでない、泣くでない」
頭をぽんぽんしたら、想像より髪がさらっさらのふわっふわでちょっとこれは嵌まってしまいそうだ。
『お前、酷いのか優しいのかわかんない』
「両方だよ」
ふむ。乾かしたい。
この銀色の髪を一度濡らして乾かしたい。
「梔 ダンテ。お風呂に入ってくるといい」
『なんで急に?』
「いいから入ってこい」
『いや、だからなんで?』
バシャッ。と からん。
飲み掛けのビー玉入りのソーダーを頭からぶっかけた。
『・・・・・・』
「お風呂、入っておいで?」
『・・・はい』
からになっちゃったガラス瓶を庭に投げ捨てる。
瓶と瓶がぶつかって割れる音が響いた。
庭はガラスとビー玉に侵略されてしまっていて裸足で踏み行ったら足の裏が死んでしまいそうだ。
鼻歌を歌いながら冷蔵庫からビー玉入りのソーダーが入ったガラス瓶をとりだして蓋をあける。
すぽんっ。ときこちいい音と甘い匂いと炭酸水特有の音。
縁側に座って庭を眺めた。
庭からはいつも花も咲いてないのに甘ったるい匂いが漂ってくる。これは炭酸水に砂糖を溶かしたソーダーの匂い。
バラバラに形もそぞろに割れたガラスたちと傷ひとつない透明なビー玉たちがキラキラ光ってる。
ここは私の庭。
私の箱庭。
生き物が降り立つことのできない庭。