ジョージは、短くなったタバコを灰皿に押し付けた。
「そこで知り合ったのが美和だよ」
何もかも嫌になって自棄になっている風間。
ふと立ち寄った店で、美和が歌うステージを見た。
気がついたらすっかりその歌声に魅了されていて、毎日のようにその店に通う。
「いつも聞きに来てくれてありがとう」
真っ赤なドレスを身にまとった美和が、風間の元に近づいた。
元々あまり女性と話をするのが得意ではない。
最初はぎこちなく愛想笑いを返すだけだったが、次第に、少しずつ会話が続くようになっていった。
「プロにはならないんですか?」
風間はそう聞いてみる。
美和はブランデーのグラスを傾けながら、そんな風間に笑顔を向けて。
「私なんて、そんな器じゃないわ。それに、今のままで充分満足してるもの」
「勿体ないですよ。それ程の実力を持っているのに」
「その実力は、この街の人達だけに使うわ。それなら、全然勿体なくないでしょ?」
そう言って屈託のない笑顔で笑う美和を、風間はじっと見つめる。
自分も最初は、誰もが認める実力を持っていると思っていた。
いや、今でも思っている。
大学の成績も、訓練の成果も、今まで誰にも負けた事がなかった。
そして正義感も、人一倍持っていると自負している。
だが、第一線で活躍するという自分の意志は、上層部の連中にことごとく握りつぶされて。
気がついたら、こんなゴミ溜めのような街に弾き飛ばされていた。
この街で起きる軽犯罪は後を絶たず、警察も全部には手が回らない。
むしろ、ある一件の事象に関わっている間にも次々と犯罪は起きる。
だから必然的に、大きな犯罪だけを選んでそこに力を入れる事になり。
事実上、軽犯罪を黙認しているような形になってしまっている。
許し難い事だったが、風間一人ではどうにもする事が出来なかった。
「そこで知り合ったのが美和だよ」
何もかも嫌になって自棄になっている風間。
ふと立ち寄った店で、美和が歌うステージを見た。
気がついたらすっかりその歌声に魅了されていて、毎日のようにその店に通う。
「いつも聞きに来てくれてありがとう」
真っ赤なドレスを身にまとった美和が、風間の元に近づいた。
元々あまり女性と話をするのが得意ではない。
最初はぎこちなく愛想笑いを返すだけだったが、次第に、少しずつ会話が続くようになっていった。
「プロにはならないんですか?」
風間はそう聞いてみる。
美和はブランデーのグラスを傾けながら、そんな風間に笑顔を向けて。
「私なんて、そんな器じゃないわ。それに、今のままで充分満足してるもの」
「勿体ないですよ。それ程の実力を持っているのに」
「その実力は、この街の人達だけに使うわ。それなら、全然勿体なくないでしょ?」
そう言って屈託のない笑顔で笑う美和を、風間はじっと見つめる。
自分も最初は、誰もが認める実力を持っていると思っていた。
いや、今でも思っている。
大学の成績も、訓練の成果も、今まで誰にも負けた事がなかった。
そして正義感も、人一倍持っていると自負している。
だが、第一線で活躍するという自分の意志は、上層部の連中にことごとく握りつぶされて。
気がついたら、こんなゴミ溜めのような街に弾き飛ばされていた。
この街で起きる軽犯罪は後を絶たず、警察も全部には手が回らない。
むしろ、ある一件の事象に関わっている間にも次々と犯罪は起きる。
だから必然的に、大きな犯罪だけを選んでそこに力を入れる事になり。
事実上、軽犯罪を黙認しているような形になってしまっている。
許し難い事だったが、風間一人ではどうにもする事が出来なかった。

