この男は、女1人で飲みにきた彩香も、昨日あれだけ若者が熱狂したダンサーである“美和”の事も覚えていない。
どういう事だ?
「手が止まってるよ、佐武くん」
不意にそんな声が聞こえ、佐武は慌ててオーダーのメモを確認しながら仕事に戻った。
同時に、彩香の隣に1人の男が座る。
「隣、いいですか?」
「ナンパじゃねえだろうな?」
笑いながら、彩香は男に言う。
だが頭の中で警報が鳴り響いていた。
穏やかな笑顔で彩香の隣に座ったこの男は、佐久間心療内科クリニックの院長、佐久間忠彦だ。
「私がもう少し若ければ、あなたのような女性を見たらすぐにナンパしたいと思うんだろうけどね。この歳にもなると、ここでこうやって若い人達が元気に騒いでいるのを見るだけでも満足なんだよ」
「あたしはショータイムが楽しみで来たんだけどね」
「あぁ、それならもう少し待つと始まるよ。今日は新人のダンサーだから、暖かい目で見てくれるとありがたい」
「オジサン、この店の関係者?」
わざと聞いた彩香の問いに、佐武が答える。
「この人は店のオーナーですよ」
「・・・へぇ」
彩香の目つきが、少しだけ険しくなる。
「佐久間と申します。良かったらお名前お聞かせ願えるかな?」
「峯口彩香」
少しだけ低い声で、彩香は言った。
佐久間は右手をこっちに差し出して。
「はじめまして彩香さん、お近付きの印に、私から一杯ご馳走させて貰えませんか?」
「あ、じゃあロングアイランド・アイスティーを作りますよ」
佐武が言った。
佐久間は感心したように言った。
「珍しいカクテルの名前を知ってるんですね」
「あぁ、知り合いの小百合って子が好きだったカクテルなんだ」
軽く握手を交わしながら、彩香は笑う。
この男は、まだこの街に来て日が浅い。
この街の連中は、峯口の名前を聞いただけで皆、多少は警戒するものだ。
どういう事だ?
「手が止まってるよ、佐武くん」
不意にそんな声が聞こえ、佐武は慌ててオーダーのメモを確認しながら仕事に戻った。
同時に、彩香の隣に1人の男が座る。
「隣、いいですか?」
「ナンパじゃねえだろうな?」
笑いながら、彩香は男に言う。
だが頭の中で警報が鳴り響いていた。
穏やかな笑顔で彩香の隣に座ったこの男は、佐久間心療内科クリニックの院長、佐久間忠彦だ。
「私がもう少し若ければ、あなたのような女性を見たらすぐにナンパしたいと思うんだろうけどね。この歳にもなると、ここでこうやって若い人達が元気に騒いでいるのを見るだけでも満足なんだよ」
「あたしはショータイムが楽しみで来たんだけどね」
「あぁ、それならもう少し待つと始まるよ。今日は新人のダンサーだから、暖かい目で見てくれるとありがたい」
「オジサン、この店の関係者?」
わざと聞いた彩香の問いに、佐武が答える。
「この人は店のオーナーですよ」
「・・・へぇ」
彩香の目つきが、少しだけ険しくなる。
「佐久間と申します。良かったらお名前お聞かせ願えるかな?」
「峯口彩香」
少しだけ低い声で、彩香は言った。
佐久間は右手をこっちに差し出して。
「はじめまして彩香さん、お近付きの印に、私から一杯ご馳走させて貰えませんか?」
「あ、じゃあロングアイランド・アイスティーを作りますよ」
佐武が言った。
佐久間は感心したように言った。
「珍しいカクテルの名前を知ってるんですね」
「あぁ、知り合いの小百合って子が好きだったカクテルなんだ」
軽く握手を交わしながら、彩香は笑う。
この男は、まだこの街に来て日が浅い。
この街の連中は、峯口の名前を聞いただけで皆、多少は警戒するものだ。

