そして峯口はしばらく考え込むように沈黙した。
彩香は少しだけ、そんな態度に違和感を覚える。
いつも強気で俺様な男で、どんな事柄にも迷うことなどないこの男が。
『彩香』
しばらくして峯口は、ようやく言葉を発する。
『もひとつ仕事、頼んでいいか?』
「何だよ」
『ちょっと“スターダスト”の内部事情を探って来て欲しいんだよ』
「へぇ。あんたともあろう者が、この街にある店の内部事情も知らないのか?」
『あのなぁ、俺は街を取り仕切ってる訳でもねぇし、何百件あるか分からねえ店の全部を把握してる訳でもねぇんだよ。それに、あそこは最近経営者が変わってなぁ、それから別段目立った悪さをした訳でもねぇから、気にも止めてなかったんだよ』
まぁ、峯口の言い分は最もだ。
それに、彩香も個人的に“スターダスト”で調べたい事がある。
「了解」
『ホントはこういうの、風間かジョージが得意なんだけどなぁ・・・』
「居ねぇんだから仕方ねぇだろ」
二人とも今月の給料減らしちゃおうかなぁ、などとボヤいている峯口。
それにしても、ジョージも風間も、どこで何をしているのだろうか。
くれぐれも問題起こすなよ、と峯口は念を押すように言う。
うるせぇ、と彩香は、そんな言葉を聞き流して。
「ガッツリ眠って体力回復したしな、AGORAも休みだし、これから行ってくる」
『公私混同は良くないと思うよ、彩香ちゃん』
酒代は経費で落とせよ、と彩香は電話を切った。
☆ ☆ ☆
昨日の時点では、まさか2日続けて“スターダスト”に来る事になるとは思ってはいなかった。
だが、まだ開店したばかりだと言うのに、ダンスミュージックが大音量で流れる店の中は今日も元気な若者達で殆どのテーブルが埋まっている。
彩香は、店の隅にあるカウンターに座った。
「いらっしゃい、何にしますか?」
カウンターの中で、バーテンダーが声を掛けてくる。
ウイスキーを頼んでタバコを取り出すと、バーテンダーは彩香の目の前にスッと名刺を差し出した。
彩香はそのバーテンダーを見上げる。
「はじめまして。店長の佐武です」
ワイシャツに蝶ネクタイをした、爽やか系の真面目そうな男だ。
愛想のいい笑顔をこっちに向けている。
「どうも」
名刺を受け取りながら、彩香は軽く頭を下げた。
彩香は少しだけ、そんな態度に違和感を覚える。
いつも強気で俺様な男で、どんな事柄にも迷うことなどないこの男が。
『彩香』
しばらくして峯口は、ようやく言葉を発する。
『もひとつ仕事、頼んでいいか?』
「何だよ」
『ちょっと“スターダスト”の内部事情を探って来て欲しいんだよ』
「へぇ。あんたともあろう者が、この街にある店の内部事情も知らないのか?」
『あのなぁ、俺は街を取り仕切ってる訳でもねぇし、何百件あるか分からねえ店の全部を把握してる訳でもねぇんだよ。それに、あそこは最近経営者が変わってなぁ、それから別段目立った悪さをした訳でもねぇから、気にも止めてなかったんだよ』
まぁ、峯口の言い分は最もだ。
それに、彩香も個人的に“スターダスト”で調べたい事がある。
「了解」
『ホントはこういうの、風間かジョージが得意なんだけどなぁ・・・』
「居ねぇんだから仕方ねぇだろ」
二人とも今月の給料減らしちゃおうかなぁ、などとボヤいている峯口。
それにしても、ジョージも風間も、どこで何をしているのだろうか。
くれぐれも問題起こすなよ、と峯口は念を押すように言う。
うるせぇ、と彩香は、そんな言葉を聞き流して。
「ガッツリ眠って体力回復したしな、AGORAも休みだし、これから行ってくる」
『公私混同は良くないと思うよ、彩香ちゃん』
酒代は経費で落とせよ、と彩香は電話を切った。
☆ ☆ ☆
昨日の時点では、まさか2日続けて“スターダスト”に来る事になるとは思ってはいなかった。
だが、まだ開店したばかりだと言うのに、ダンスミュージックが大音量で流れる店の中は今日も元気な若者達で殆どのテーブルが埋まっている。
彩香は、店の隅にあるカウンターに座った。
「いらっしゃい、何にしますか?」
カウンターの中で、バーテンダーが声を掛けてくる。
ウイスキーを頼んでタバコを取り出すと、バーテンダーは彩香の目の前にスッと名刺を差し出した。
彩香はそのバーテンダーを見上げる。
「はじめまして。店長の佐武です」
ワイシャツに蝶ネクタイをした、爽やか系の真面目そうな男だ。
愛想のいい笑顔をこっちに向けている。
「どうも」
名刺を受け取りながら、彩香は軽く頭を下げた。

