「あらあら、あなた達も、すっかり気合い入れちゃってるのね」


 3人を抱き締めながら、桜子は苦笑した。
 そう言う彼女も、これからサバイバルにでも行くような出で立ちをしている。


「ここは任せなさい、風間ちゃん。早くしないと、本当に大事なものを無くすわよ?」
「あたしもここにいるから」


 友香が“ドア”からあまり離れられない体質なのは知っている。
 だが、ここにもし敵が来たら・・・これだけの人員で、守りきれるのだろうか。
 だが風間のそんな疑問は、すぐに打ち消された。
 屋上のドアから、続々と人間がこっちにやってくる。
 それは、峯口建設の従業員たちだった。


「何なんだ、全く・・・」


 続々と集まってくる人達を見つめて、風間は苦笑する。


「このお祭りを仕掛けたのはあなたですよ、風間さん」


 笑いながらそう言うのは、クラブ“AYA”の秋田だ。


「いやぁ、今夜は店の皆を説得するのに苦労しました。みんなお祭りに参加したがっちゃって・・・でもお店を休む訳にも行かないので、俺1人が代表で行くとやっと説き伏せたんですよ」


 もうこうなってしまっては、今更帰れなどとは言える筈がない。
 それに。


「友香さん」


 桜子と楽しそうに話をしている友香に、風間は近付いた。


「さっき、美和がどうのとか・・・」
「あたしの願いはそれだけ。ほら、早く!」


 友香に背中を押されるが、風間はまだ納得が行かない様子だ。


「風間ちゃーん。何なら本当にあたしたちがお尻を蹴ってあげましょうか?」
「・・・分かりました」


 オカマちゃんトリオに凄まれて非常階段に向かう風間に、桜子が言う。


「大丈夫よ。ここにいる全員が、同じ気持ちだもの。あなた1人が想っている訳じゃないのよ。みんなが大好きなのよ、美和もーー彩香も」


 そうですね、と風間は笑う。
 誰が上司で、誰が部下だという訳ではない。
 ここにいるのは、志を同じくする仲間なのだ。
 それならば、今、自分が出来る最上級の行動をするしかない。
 せめて、失うものを最小限に食い止める為にーー!


「皆さん、ここは任せます」


 風間はホルダーから銃を抜き、弾倉を確認する。
 そして、非常階段を降りて行く。