『夏は蛍の ともし灯に
短き夜半を くよくよと
泣き明かしたる ほととぎす』

冨花が艶っぽい声で歌う、『夏は蛍』が、切なく、甘く、部屋に響く。

花織は、隣に座っている山崎の横顔を眺めた。楽しそうに、舞を見ている。花織の視線などに気づいていない。

なぜか、無性に泣きたくなった。

「子供みたいだな、私。」
ふふ、と自嘲気味に笑う。

昔から憧れていた山崎のそばに新選組の隊士としていれるのだ。これ以上のことはない。
……はずなのに。

目が、合った。
そして、花織に笑いかける。
そんな、山崎は、きっと花織の気持ちを微塵も理解していないだろう。

もう、嫌だ。

花織は、目の前にある食事に手を伸ばした。