「ええなあ。あの芸子はん。
うちもあんなカッコええひとにお持ち帰りされてみたいわぁ。」
「あの男の人めっちゃカッコええなあ。」
など、ほとんどは烝さんがかっこいいというような内容だった。
しかし、私にはある女性たちの会話に頬が熱くなった。
「あの芸子はんと男の人お似合いやね!」
「せやね。美男美女ってええなあ」
"美男美女"
私達はカップルに見えるのだろうか。
一方烝さんは、私たちを注意していたおじさんが面倒くさくなったようで、「花織、走るで」と言いながら私を引っ張って走り出した。
カランコロンと私の厚底の下駄が音を立てる。
斜め前を見ると烝さんがいる。
こんなに目立ってしまっているのに、それを幸せだと感じてしまう。
そして、この人に出会えてよかった。
ようやくこの時代で生きていく意味というものが見えてきた気がした。