幕末の恋と花のかおり【完】






その時だった。


がらっと襖が音を立てる。そして、暗い部屋に光が降り注いできた。
そちらをちらっと見ると、そこには一番会いたかった人、山崎烝がいたのだった。



「彼女を、離してください」



関西弁ではなく、標準語を話している。仕事モードだ。



「嫌だね。第一、君になんの権利があるの?
君には関係ないだろう?」


吉田栄太郎は、山崎に言う。



「申し訳ありませんが、関係大ありなんですよ。


彼女は、自分の大切な恋人なんで。」

監察方という立場上、山崎は自分のことを話すことが出来ない。だからついた恋人という嘘。
しかし、その響きに動揺を隠すことができない。


一方の吉田栄太郎は、そう言われると、


「ならしょうがないね。それじゃあ、さようなら」



颯爽と去っていった。