不意に抱きしめられて、烝さんが近くなる。
「百五十年の時なんて飛び越えて、俺は花織に会いに行く。」
耳元で囁かれる切なくて甘い声。
「待っててや。」
「そんなこと言って、私がいない間に、女あそびばっかりして、私のこと忘れたりしたら許しませんから!」
冗談を言いながらも、そう遠くない別れを想像して、涙声になってしまう。

「こっち見て。」

監察方の長い指が、平成少女の顎を持ち上げた。
やがて、唇と唇が触れて、溶け合った。


出会うはずのなかった二人が出会って、恋に落ちる。
そんな運命のいたずらが最高のおくりものだったと、今なら思える。

好きで好きで好きで好きで好きで仕方がない。

もしもそれが切なく終わるのだとすれば、せめて。
今という時を、幕末というすべてを心に、体に焼き付けておきたい。


花織は目を閉じた。


たくさんの仲間と出会って、山崎を好きになれたという、幸せな悪戯を、心に抱いて。