「……あれ?
あれって、高野くんかな?」
「ん、どれどれ?」
『高野くん』という言葉にピクンと体が動く
「あら、そうね」
チラッと美里が指差した方を見たら、確かに優がいた
「…隣にいるのって……」
「小林華ね」
こばやし、はな?
まじ……かよ
優の隣を歩いていたのは、男バスのマネ、小林華だった
『正直俺、小林先輩嫌いだし』って、言ってたよな?
じゃあなんで
私たちの少し前を、あんなに楽しそうに歩いてるんだ?
モヤモヤと心臓に雲がかかっていく
まただ………
なんでなんで
そんな気持ちが頭の中を支配する
病気、こんなに悪化してたのか
「……凛?」
2人を呆然と見つめる私に気づき、萌が心配そうに見てくる
「凛ちゃん?」
美里も私に気づき振り返る
「……わり、私今日は帰るわ」
私はそう言うと踵を返し、元きた道を走った
「凛!」
「凛ちゃん!」
後ろから2人の呼ぶ声が聞こえたけど、今はそれどころじゃなかった
私は唇を切れそうなくらい噛み締め、前を見ないで走った
前を向いたら、なんだか涙が溢れてきそうな気がしたから