『それじゃみんなで言いましょうか。


女子のMVPは_________?』




「「「「天野凛様(ちゃん)でーす!‼︎」」」」





……………………は?






いやいやいや、私何もしてねぇけど





『その通りです。

彼女は足と腕に怪我を負いながらも、騎馬戦とリレーに出場しました。
そしてリレーでは転倒しながらも、しっかりとバトンを繋ぎました。



よってMVPは天野凛さん。


天野さんは壇上に上がってください』




………え




まじかよまじかよ



みんなにキラキラした目で見つめられ戸惑う私



「凛ちゃん、行ってらっしゃい!」



そう美里に言われる




しょうがねぇか…



私は1年B組の列の真ん中を通り、壇上へ向かった




その途中、


「お疲れ」


「よく頑張ったね!」


「かっこよかったよ」


とか色々な言葉をかけられて、背中を優しく押された





なんかいい人ばっかだな、このクラス




あの花沢でさえ優しく微笑んでくれた




私はなんとか壇上の前までたどり着いた



……………けど



「すみません、登れないんすけど」





足が痛くて壇上に登るための階段を登れなかった




地味に段差の高い階段




『梅宮くん、悪いけど降りて天野さんと並んでくれる?』


「あ、はい」




梅宮勇人が壇上から降りて、私の隣にならんだ





『梅宮勇人くん、天野凛さん。

ふたりとも、よく頑張りました…………』


壇上に立っているハゲ校長がまたのろのろと喋り出した




はぁ、またかよ





「なぁ、この校長、話なげーよな」




突然隣に立っていた梅宮勇人が苦笑いしながら小さな声で話しかけてきた





「そうですね」



私も苦笑いしながら答える





「しかもハゲてるしな」




「それ私も思います」




なんだこの人




よく分かってんじゃねぇか



褒めてつかわす


……なんちゃって





梅宮勇人とは初めて話したけど中々話しやすい人だった




『…それでは、2人の素晴らしい行動を讃え、拍手で祝おう!』




パチパチパチパチといたるところから聞こえてくる





なんか…あざっす





そのあと私は小さい賞状をもらい、元の位置に戻った






『それでは、これで第54回桜ヶ丘高校体育祭を終わります』





ふーっ、やっと終わった





初めての体育祭は、いろいろあったけど





何気に楽しかったと思う








また一つ



みんなとの思い出が増えた、6月の蒸し暑いある日だった