車で走ること約一時間。



「わあ、キレイ!」



空が青い。
ぽかぽかしてて、いい休日だ。


目の前ではしゃぐ女の白いワンピースが風になびく。

…風が風になびくなんてのも、変な話だ。


俺たちの他には誰もいないここは、ある意味非現実的にすら思える。



「海に来たかったのか?」

「はい!私昔から海って大好きで。あ、泳ぐのはあんまり好きじゃないです。こうやって眺めたり、足だけで遊んだりするのが好きで」



白い肌に反射する太陽の光が眩しい。
海の青をバックに、軽くめまいを覚えるほど。



「…佐伯さんと、来たかったんです」



その一言に、俺は何も言えない。

きらきらしたその姿に、さらさらした髪に、危機感を覚えた。

自分のことを風だと言い張るこいつが、ここでこのまま消えてしまうんじゃないかとさえ感じた。



波打ち際に向かって歩いていく背中を無性に引き留めたくなる。
…そんなことして、何になる。

昨晩の押し殺した泣き声が頭にこびりついて離れない。