やめてほしい。


俺はそんな綺麗な人間じゃない。

ずっとそうだ。
苦手な人間には自分から近付かない、最低限の会話しかしない。
いつもイライラしながら仕事して、心の中で散々悪態をついて。
スナックから聞こえる誰のものかもわからない歌声にさえ愚痴をこぼして。

最低だって、最悪な人間だって思って今まで生きてきてんだ。

それが違うっていうなら俺は一体何なんだ。誰なんだ。



「…お前の目に俺がどう映ってんのか知らねえけど、あんまり簡単に他人を信用するもんじゃねえぞ。理不尽に痛い目みるはめになる」



そうだ。
他人は簡単に信用してはいけない。
性格の悪い俺が出した答えだ。



「もし佐伯さんの性格が悪い部分があるなら、それは自分に対して、です」

「は?」

「佐伯さんは自分のことを卑下しすぎです。自分で自分を追い詰めて、苦しめて、俺は最低だって決めつけて。…そうじゃないんです。あなたが最低なのは、あなた自身にだけです」


女はカフェオレを飲みながらそう言った。


「心の中で文句を言うなんて、そんなの当り前のことです。誰だってすることです。最低だっていうならこのカフェオレは何ですか?毒でも入れてあるんですか?」