「人違いじゃねえ?じゃなかったらお前勘違いしてるわ。俺は優しくなんて」
「勘違いなんかじゃありません!」
うわ、びっくりした。
こいつこんな大きい声出せたのか。
突然押しかけてきたことといい、見た目と違って押しの強い女だな。
「わ、私知ってます。佐伯さんが本当は優しい人だってこと。周りに人一倍気をつかって、結果自分が苦しくなっちゃうような人だってこと」
…こいつ、なんでこんなに必死なんだ。
関係ねえだろうが。
「…なんだよ、俺の何を知ってるって言うんだ。お前に何がわかるんだよ」
「知ってます。今日だって遅くまで仕事して、誰よりも働いて、でも文句も言わない」
ちょっと待て。
なんでそんなこと知ってる。
「コンビニに行ったら絶対、店員にありがとうございますって声をかけること、レシートが間違ってても怒らずに受け取ること」
怖い怖い怖い。
俺じゃなくてこいつが犯罪者なんじゃねえの?
ていうかまじで風なんじゃねえだろうな。
「口には出さねえだけで、腹ん中では結構えげつないこと考えてんだ、俺は。見えてないだけだ」
「口に出さずに自分の中だけにとどめて、周りには何も言わずに自分で解消するんでしょう?それは優しいからこそ出来ることです」

