「あたしの気持ち……受け取って下さい……。」
声も手も、震えていた。
それでもちゃんと、ガトーショコラの入った紙袋は落とさないように、しっかり掴んでいた。
「……ん……。」
たった一言の返事。
掴んでいた紙袋が、あたしの手から加々尾くんの手へと移った。
「……さんきゅ。」
その言葉はきっと、これからのあたしの宝物になる。
加々尾くんは紙袋の中から箱を取り出して、その箱の中から、あたしが作ったガトーショコラを取り出した。
小さく小さく詰められた、数個のガトーショコラ。
甘いのが苦手な加々尾くんのために、甘さは控えめの苦いガトーショコラ。
結菜ちゃんは「苦い!」って顔をしかめてたけど……。