僕「すみませんすみません僕、全く美味しくないので食べないでください!」

何故か命乞いだ。熊じゃ言葉わからないのに。だが、返事があった。

「だだだ 大丈夫だす。こちらこそすみましぇんでした!」

? 熊が喋ってる?不思議に思い顔を上げると、
そこには熊の毛皮を着た少女が涙目でこちらを見てた。

僕「なんだ、人か…」

そう僕が言うと

「人?」

と、不思議そうにその子が首を傾げた。
そして、すぐに

「そっか 私、人に見えるんだ…」

と変な独り言をつぶやいた。
『人に見える?なにを言ってるんだこの子は』と考えたらその子が

「あのー。迷っちゃったんですか?今からだと戻るのは無理なので私の家に行きませんか?」

と言った。僕はこの世にもまだ神がいるんだなと思った。返事はもちろん「イエス」
僕はその子についっていった。
これでなんとか今日はしのげそうだ。
でも明日はどうする?その時はそこにいる子にいい住処を紹介してもらおう。
そんなことを考えていたら、家に着いたようだ。

「ここが私の家です。」

森の少し開けたところに小屋がポツンと建っている。街にある家々と比べればずいぶん質素な家だった。少し想像してたのとは違っていたが家がないよりはマシだろう。

「どうぞ、中に入ってください。少し狭いですが」

僕「ありがとう。」

中に入ると、中も外観と同じで質素なつくりで何個か部屋があった。「狭い」と言っても僕にとっては広く感じられた。
どこからかハーブと甘い匂いがする。
すると、僕のお腹が「ギュルルルル」となった。今までまともな食事などないからいつも腹が減っている。おまけにずっと歩いたからヘトヘトだ。
そんな僕の様子を見てその子はクスクスと笑い、僕にサンドウィッチを差し出した。

「ずっと食べてなかったのね。これ、お昼の残りなんだけど食べて。」

やっぱり、このこは神なんじゃないか?本当は天国にいるのではないだろうかと錯覚してしまうほどだった。僕はサンドウィッチを受け取り、貪るようにして食べた。
パンのフワフワした食感とシャキシャキレタス、肉も少し味付けされてて、後からくるツーンと鼻に抜けるような辛さがマッチしてとても美味しかった。あっという間に食べた俺は量は足りないが心が満たされた。

「そんなにお腹すいていたのね。お母さーん!今日はたくさんパイ作ってね!」

お母さん…あの子には家族がいるのか、僕とは違って。ちょっと哀しく感じたがすぐにそんな気持ちは消えた。
香ばしい甘い匂いがしたからだ。
すぐに奥から女の人がパイを持って出てきた。さっきあの子が言っていたお母さんなのだろう。
その女の人はパイをテーブルに置き、僕を見た。瞬間、その女の人の顔色が変わった。まるで僕のことをお化けでも見るように。僕はなんと言えば分からず、突っ立っているとまた奥の部屋からあの子が戻ってきた。その子は血相を変えて酷く怯えている様子の女の人になんでもない顔で、

「いい忘れてたけど、彼、森に迷ったみたいで今日1日ここに泊まることになったけどいいよね?」

と言った。そして、女の人は呪縛から解かれたようにハッとその子を見て言った。

母「泊まる?何を言ってるの!
あなたは死にたいの!?」

なんで人を泊めるだけでそんなに怒るのか?確かに僕はどう見ても汚いから嫌なんだろうけどそこまで拒否しなくても…しかも死ぬって何だ。大げさすぎる。でもまぁ僕がこんな身なりだから何らかしらの病気を持ってると思われても無理はない。一応ダメ元で聞いてみた。

僕「あのー。ダメでしたか?」

二人は僕の方を向き、沈黙してしまった。しばらく気まずい空気になって僕は「しまった」と後悔していたら、

母「ごめんなさい。」

と女の人が謝った。

僕「大丈夫です。そうですよね、こんな僕じゃ嫌ですよね。」

僕がそう言うと女の人は少し僕を憐れんだ目をして、1つ溜息を吐いた。
そして女の人は僕の前に立ち、言った。それは僕にとって人生最大の衝撃を与えた。
〈続く〉