裏倉庫を飛び出した私は、ただ行く当ても無く我武者羅に走り続けた。
気づけば外は、ポツポツと雨が降り始めている。
それに構わず、私はローファーに履き替えることもせずに外を飛び出した。
雨が容赦なく私の頬や腕をたたきつける。
いっそのこと、思い切り濡れてしまえばいいと本気で思った。
涙で濡れる自分の頬も、泣いているかさえも分からないくらいに、グシャグシャにしてくれればと。
「・・・・・・・・っ」
何も考えずに走っても、何故か涙腺は止まることを知らなかった。
温かな液体が頬に流れるのを気づかないふりをして、何でこんなに悲しいのかも考えないで。
いつか、籠から飛び出せた鳥も、また鷲掴みにされ縄に縛られて・・・。
もう消えかかっていたあの記憶が、置くから奥へとじわじわと蘇る。
モノクロの写真に降り注ぐ、赤い、血。
後ろから急に誰かに腕をつかまれ、私の足は急停止する。
そして、誰かも分からない誰かに包まれ、温かな体温がじわりと交信した。
「お兄ちゃん、・・・・っ」
気づけばそう、口にしていた。
雨は容赦なく、降り続ける。


