「……湊くん?」 雫の声にはっとして現実に引き戻される。 「あ……落ち着いたか?」 「うん。ありがと。もう大丈夫」 雫が涙を拭い、笑顔になる。 よかった。 心の底からホッとした。 「……待ってろ。帰りの支度するから」 俺は帰りの支度をするためにロッカーに向かった。 そこで、目に入った兄貴のロッカー。 きっと、透先輩や夏樹先輩、広場先輩も忘れたくないんだ。 兄貴がここにいた、証を――。