嘘だと思いたいのに、現実は甘くなかった。


兄貴は、夢を叶えることができなかった。


もう兄貴の野球は、二度とみれない。


俺はよろける足で部屋に閉じこもると、一人泣いた。


悲しくて泣いた。


苦しくて泣いた。


辛くて泣いた。


悔しくて、泣いた。


葬儀に参列したとき、一人の女が詠斗の身体にしがみついて泣いていた。


そのときは、詠斗の彼女なんだ。


としか思わなかった。


今ならわかる。


その女は、今ここにいる片瀬雫だったんだ、と。