「別に手なんて出してませんよ。俺、練習行きます」


湊くんは私に「じゃな」と言うと、バットを手にとって、グラウンドに出ていってしまった。


なんか、私。


悪いことしちゃった?


「いや、片瀬は関係ないよ」


私の心の中を読んだかのように、透が優しく笑った。


「でも、珍しいな。片瀬、あの事があってから野球見に来てなかっただろ?」


「うん……。湊くんにクッキーを渡しにきたんだ。あ!透!今日は終わるまでここにいていいかな。」