「あれ?どうした?イメチェン?」
声をかけてきたのは、東松山 凛子(ひがしまつやま りんこ)だ。
長い黒髪をなびかせているこの凛子とは、幼稚園から・・・いや、
生まれたころから家族ぐるみで付き合いがある、いわば幼馴染というやつだ。
家も隣同士で、幼稚園のころからずっと同じ学校に通っていて、毎朝一緒に登校している。というか、なぜかいつも一緒になる。
今朝もそうだ。
「どうよ?美容院ってとこで切ってもらったんだぜ?福山だぜ?桜坂だぜ?」
前髪をいじりながら凛子にアピールするが、その前髪を思いっきりわしゃわしゃと撫でられる。
「おまっ!何すんだよ!」
「なーにが、美容院よ!病院行って診てもらいなさいよ!」
「ははぁーん、さては、俺があまりにもかっこよすぎて惚れてんだろ?え?」
「なんかジローちゃんらしくないっていうか、正直、似合ってない」
カッー!
ムカツク。
本当なら、ここでチョップでも食らわすのが、男として在るべき俺なのだが、生憎、こいつの親父はプロレスラーで、その影響からか、こいつには腕力では敵わない。
俺の親友の一人、福島 元気(ふくしま げんき)という巨漢なんか、
廊下ですれ違っただけで、ラリアットを食らわされ、倒れて泡を吹く元気を見て、
「もう、元気くん、大袈裟だなー」
と高笑いするような女だ。
体格と面白さでは勝っているとはいえ、腕力でも、性格の悪さでも、ついでに、成績でもこいつには勝てない。



