そういえば、佳祐の奴、今日一言もしゃべってないような気がする。



「どうしたの?佳祐。今日、誰よりも元気ないね」



元気の言葉に、タチションをするポーズのまま佳祐がこちらを向く。



「あのさー、俺、考えたんだけど・・・」



「どうした?息子丸出しで」



「やっぱり女子って気が利く男がタイプなんじゃないかなって」



気が利く男?



「ほら、うちの親ってさ、いわゆる鬼嫁ってやつじゃん?」



佳祐の母さんは本当に怖いらしく、夫婦喧嘩をすると、必ずと言っていいほど、木製の靴ベラが登場して、父さんは滅多打ちにされるのだとか。



そんな母さんに育てられた佳祐だ。
なにか悪いことをすると、靴ベラで叩かれる。



靴ベラによって叩かれ、強い根を張った今の佳祐がある。



佳祐は、靴ベラによって育てられたのだ。



「で、母さん、リビングに寝っ転がってテレビ見ながら父さんに"食器洗っておいて"とか"ゴミ捨てと洗濯もね"とか。俺さー、思うんだけど、それを文句も言わずにやる父さんが好きで結婚したんじゃないかなと思うんだよね」



いやいや、お前の家の場合、母さんが怖いから仕方なくやってるって感じじゃないだろうか。