中学二年生最後の春休み、
私は近隣の県に引越した。

引越しても、今まで通っていた病院は変えなかった。

相変わらず、
会計の窓口にカルテを持ってゆき、
投薬窓口に処方箋を出して、
1〜2時間、薬と会計に呼ばれるまで待たないといけない。

だから、待合室でじっと待たずに病院を出て、

ちょっと前まで住んでいた地域が妙に懐かしくなる!

店屋物をいつも頼んでいたうどん屋さんに入った。

いつものうどんをすすってると、
同じ病院の帰り道らしいおばあさんが、
ため息混じりに私に話した。

「年をとると、
あっちこっちがおかしくなって、
こんなに私、
沢山の薬飲んでるのよ……。」

おばあさんが嘆いた。

「あら、私も薬飲んでるわ♪
同じ病院ね!
今処方箋出して、
会計してるの!
1〜2時間待ちだから、
お昼食べに来た所よ!」
って答えたら、

「えっ!
そんなに若いのに……!!」

言葉を詰まらせた。

「小さい頃から、
しょっちゅう病気してて、
隣の県に引越ししちゃったから、
電車乗り継いで来たのよ!」
って言ったら、

おばあさんは、
黙りこんでしまった。

きっと今まで、ずっと健康だったから、
初めて、病院に通院するようになって、
落ち込んでしまっていたみたい……。

病院にあまり縁が無かったって、
私には、ちょっと羨ましいかったわ!

別れぎわ、
おばあさんが、

「お嬢ちゃん、
頑張ってね!」

と言った。

それは、
おばちゃんも、
頑張るわ!

とも聞こえた。