T先輩に逢わないように、
私は、皆にバレたその日の帰り道から通学路を変えた。

ちょっと遠回りした。
帰り道もそのルートにした。

T先輩に、
逢ったら、
上手く説明出来ない……。

私は、口下手だ。

C先輩と付き合っていたんだから、
私は、身を引いたんだ。

そう理由をつけた。

何日かして、
T先輩が、
家に電話してきた。

「あ、
ぴろちゃんか?
最近、会わないけど、
元気か?」

「う、うん……。
元気かな?
ちょっと、
色々あって……。」

「そっか、
会わね〜から、
顔見て〜な、
逢わないか?」

「あのさー、
T先輩、
受験勉強中なんでしょ?」

「ああ、気にするな!
逢えば、
やる気出る!!」

「あのさー、
私、二年生たちに、
デートの事、
バレたの……。
だから、窓で、
押されて……。」

「そうだったのか?
そのぐらい!!
気にするなよ!
でさー、
今度の日曜、
暇かい?」

「忙しいから……。
もうすぐ、
私、転校するから……。」

「いつか?
なら、
逢って詳しく話さないか?」

逢いたい……!

いやいや、
ダメ……。

ダメダメ!!

「えー、
忙しくて、
ダメ……。
ごめん……。」

「何でだ?
引っ越すからか?」

「C先輩と、
付き合っていたんですよね?」

「……知っていたのか?
俺たちまだちゃんと付き合っていないから嫌なのか?
なら、ぴろちゃんと付き合ってやっていいぜ!
アイツと別れて……。」
私は、ムッとした!

「やだ!!
そんなの……。」

私は、デートして、
付き合っている気分になっていた。

T先輩は、単なる火遊びに過ぎなかった。

C先輩と私とを
両天秤にかけて、
簡単に、
C先輩を捨てるとかいうなんて!?

私とまた誰かと両天秤かけて、
誰かのほうが私より良ければ、
私も簡単に捨てるのだろう!!

冗談じゃない!!

「ぴろ?」

ガチャン!!

私は、受話器を
乱暴に置いて、
電話を切った!

酷い!!

酷い!!

好きだったのに……。

初恋は、
かなわなくて、
甘酸っぱい思い出とかいうけど、
ドロドロとした不倫の愛憎劇みたいなのが、
私の、かなってしまった初恋だなんて!!

酷すぎる!!