小学6年生のある日、
私は一人で、
家の近所の住宅道路を

ローラースケートをして、
遊んでいた。

うちの2軒隣のマンションには、
Tくんが住んでいた。

すると、
Tくんが、
私に、

「もっと身体を少し前に傾けたら?」

「え?」

Tくんが声をかけてきた。

Tくんとは、
低学年の時に、
Tくんの家で、
遊んでいたこともあったのだけど、

さすがに4年生辺りからは、
お互い周りの同級生の目が、
気になったので、
あまり話したりしなくなっていた。

今日は、
周りに人が居なかったので、
堂々と声をかけてきたのだ。

「空気の抵抗が少なくなるから、
速くなると思うよ!」

「えっ!
そうなの!
やってみる!」

スピードスケートの選手は、
フィギアスケートの選手と違い、
身体を前に傾けている!

でも、私は当時スピードスケートとか、あまり興味がなくて、
そういうフォームを知らなかった。

Tくんに言われた通りに、
滑ったら、

「やった!
さっきより、
5秒速い!!」

Tくんは、私が滑る速さを
数を数えて測っていた!

「本当!?」

何度か滑るうちに、
どんどん速くなって、
嬉しくなった♪

すごいなー!

さすがTくん!

数を数えて、
速さを測るとか、
空気の抵抗なんて、
スポーツに科学的な事を
結びつけて考えるなんて……!!

Tくんの頭の良さは、
誰もが一目置く。

私が速く滑るのを
自分の事みたいに喜んでくれるTくんは、
きっと自分は、滑る事が出来ないけれど、
コーチをする事で、
私と今、
一緒に滑っている!

そう感じたら、

「オッス!
お待たせ!」

隣のマンションのSくんが来た。

「おー!
今、ぴろさんがさー、
速く滑れるようになったんだぜ!!
俺が教えたんだ!!」

Sくんは、
幼稚園からの幼馴染みで、
こないだクラスの新聞係りを
Tくんと私と一緒にやっているので、
からかわれる事はない。

「マジで!?」

TくんとSくんが見ている前で、
最初のやり方と、
教わったやり方を
順番に滑って見せた!

「スッゲーな!
本当速いな!」

Sくんも感心した!

すると、Hくんがやって来たのが見えたから、
私は二人にHくんの方を指差したら、
ペコリと頭を下げ、
Hくんと反対方向に、
滑っていった。

Hくんは、
女子と男子が一緒にいるのを見ると、
からかう奴なので。