私は、小学5年生。
ある冬の日、いつものように、
昼休みに、
屋上に出て、鬼ごっこをしていた。

ここは都会のど真ん中だから、
校庭が狭いので、
校舎と講堂の屋上もまた、
校庭代わりに、
解放されている。

はく息が白くなる。

ちょっと風邪気味だったけど、
熱は無くて、
普通に小学校に行ったの。

チャイム鳴ったから、
皆、急いで教室に入ろうと、
二ヶ所の階段へそれぞれが走り出していた……のだが、

ナゼか私は、
上半分の視界が、
紫色に鈍く覆い被さって見える光景に、
貧血かなんかになっちゃったのかな?
なんて、
ぼんやり考えていた。

一緒に遊んだ連中は、
私の様子に気がつかない……。

タオレ……ルノカナ?
ワタシ?

やっとの思いで、
階段を降りる。

よく眼が見えない……。
急に明るい所から、
屋内に入ったせいなのか?

わずかに見える階段を
壁に両手をつけながら、
手探りで、
一段、一段、
降りていく。

カイダン、オシマイ。

ロウカ、コノサキ、
キョウシツ。

ハヤク、イカナクチャ。
キョウシツニ……。


アルク。


キョウシツ。


「おい!!
どうした?」

コエガスル。

リカシツ。

ヒト、
タクサン。

「エ?」

イカナクチャ、
キョウシツ。

ココハ、リカ……シツ。

キョウシツハヤクイカナクチャ。


私は、
理科室からの笑い声を聞いたようだ。

笑い声は、
私の様子が、
変な反応だったから、
理科室の授業をおこなうクラスの連中が、
思わずウケたのだった。

理科の教諭が、
いつもと違う私の様子に、
首をひねっていた所、

無表情のまま、
ひたすら私は、
教室に向かって、
歩いていったという。

笑われても、
何も感じずに、
気持ち悪くて、
早く自分の机に座って、
休みたかった。