夜人【ヨルヒト】さん

「…………」

ぎりっと奥歯を噛み締める。

サナミは、傍らの椅子を手に取って構えた。

身体を揺らしていたチサエが、足を踏み出す。

藻の絡まった指先が、サナミへと伸びてくる。

「チサエー!!」

叫び、サナミは椅子を振り下ろした。

ごぎ、と嫌な音が響く。

チサエの首が真横を向く。首の途中に、折れた骨が皮膚を押し上げているのが見えた。

骨が折れる感触が、サナミの手に残る。

「うっ……ううう……」

サナミはよろめき、嗚咽を漏らした。

涙が溢れる。