夜人【ヨルヒト】さん

流しから水が溢れ、床にぼたぼたと流れ始めた。

緩慢な動作で、チサエが流しから少しずつ身体を出そうとしている。

その姿は、昆虫が脱皮する様を思わせた。

「チサエ……生きてるの……?」

馬鹿馬鹿しいと自分でも思いながら、それでもサナミは言わずにはいられなかった。

「…………サナ……ァ」

上履きを履いた足が、流しの縁にかかる。

「ど……して……だずげデ……ぐれなガっだ……」

ごぼっ、と藻がチサエの口から吹き出した。眼球が反転し、白目が剥き出しになる。

「キャアアア!」

叫び、サナミは飛びのいた。手からメスが落ち、床を滑っていく。