夜人【ヨルヒト】さん

吹っ飛んだ魚の標本が蛇口に当たり、水が流れ出す。

「あああっ! あーっ! うわあああっ!」

飛んでくるものがなくなってからも、サナミは声をあげ、椅子を振り回し続けた。

息が切れ、椅子が床に落ちる。

水が流れる音だけが響く中、サナミは床に手をつき、肩で息をし続けた。

どれぐらい経っただろうか。

いくらか呼吸が落ち着くと、少しづつ冷静さが戻ってきた。

ゆっくりと顔を上げ、辺りを見回す。

やはりエミカの姿はなかった。

標本とガラスの欠片が散乱し、刺激臭に満ちた空間。

扉と窓へ、順番に視線を送る。