夜人【ヨルヒト】さん

堅い手ごたえが、サナミの爪に伝わった。

「うっ!」

激痛に、サナミは呻き声を上げてよろめいた。

右手の人差し指の爪が浮きあがり、縁から血が滲み出す。

窓の鍵は、動いていなかった。

鍵を睨みつけ、転がっている椅子を左手で掴む。

「うわああああっ!」

絶叫とともに、椅子を窓へと投げる。

窓が、ぐにゃりと歪んだ。

椅子を柔らかく受け止めたガラスが、次の瞬間椅子を弾き飛ばす。

「ヒッ!」

身をかわしたサナミの髪をかすめ、椅子が真っ直ぐ反対側の棚へと突っ込んだ。