夜人【ヨルヒト】さん

プールから這い出した藻が、チサエの手を捕えていた。

濁った水の中から、次々と緑の触手が伸び、チサエへと迫ってくる。

「誰か! 助けて! 助けてぇ!!」

絶叫が虚しく空に響き渡る。

払っても払っても絡みつき、藻がチサエの身体から自由を奪っていく。

ずり、と身体が引きずられた。

藻は僅かずつ、だが確実にチサエをプールへと引き込もうとする。

夜人が、冷ややかな目でチサエを見下ろしていた。

「何でもする! 何でもするから助けて! お願い!」

哀願する声にも、その表情は動かない。