夜人【ヨルヒト】さん

「…………」

サチエは喘いだ。声にならない声が喉から漏れる。

夜人が目を閉じた。

「僕を殺した奴らも、君みたいに優しかったのかな?」

紅い涙が、頬を伝う。

「他の人を気遣うことがあったのかな……?」

別の気配を感じ、サチエはベンチを見た。

そこに、エミカが座っていた。

首に包帯がない。

顎の下から耳の後ろにかけて、赤黒いアザがはっきり見てとれた。

「ヒッ!」

悲鳴を上げ、更に後ずさる。手に、濡れた石畳のぬるりとした感触が伝わってきた。