夜人【ヨルヒト】さん

夜人が一歩踏み出す。べしゃりと床が鳴った。

「ねえ、チサエさん」

「……ッ!」

息を呑み、チサエは倒れたまま後ずさった。手のひらに石の欠片が食い込む。

「僕は殺された。君みたいな人たちに」

血の気のない顔の中で、目に赤く光が灯る。

夜人の視線がプールを指した。

「ここで」

チサエは首を振った。恐怖に歯が鳴る。

「走れない僕を、役立たずとか、トロいとか言って。鍛えてやるからって」

言葉を切り、夜人がプールを見つめた。

ややあって、ぼそりと呟く。

「ひどいよね」