夜人【ヨルヒト】さん

チサエは上体を起こし、足元に立つ夜人を呆然と見上げた。

どこか憐れむような目で、夜人はチサエを見つめている。

瞳は、黒色に戻っていた。

「……僕を、気遣ってくれたね」

「……え……?」

「さっき。走った僕を、心配してくれた」

夜人が、左胸に手を当てる。

「僕は、生まれつき心臓に穴が開いていた。他にも病気があって、手術が受けられなかった」

ぽたり、と水滴が石を叩く。

「手術をしなくても、激しい運動をしなければ生きることはできた」

眼差しが歪む。

「なのに、僕は死んでしまった」