夜人【ヨルヒト】さん

イサキの声に、刃物のような冷ややかさが混じる。

思わず身を引いたチサエの手が、ベンチから滑った。

「キャア!」

バランスを崩し、石の床へと倒れ込む。

はずみで、制服のスカートから携帯が転げ出た。

折りたたみの携帯が開き、画面が動く。

はっ、と顔を上げたチサエの目に、昨夜見たあのムービーが映った。

『夜人さん』

エミカの声が響く。

じゃり、と石を踏む音がした。水のしたたる音がそれに重なる。

「名前、最後まで言ってなかったね。僕はイサキ」

ムービーが流れ続ける。エミカの声が恨みがましく流れている。

『夜人さん夜人さん夜人さん』

イサキが微笑んだ。






「維崎 夜人」