夜人【ヨルヒト】さん

びしゃり、と水が地面を打った。

チサエの足元にも、水の染みが近づいている。

乾いた石を黒く濡らしながら、プールの方向へ染みが広がっていく。

「いじめている人は、どうしていじめられてる側が悪いと言うのかな」

イサキの声に、水音が混じる。

「ねえ、チサエさん」

「ヒッ!」

名乗っていないはずの名を呼ばれ、反射的にチサエは振り向いてしまった。

イサキが座っている。

全身がびっしょりと濡れ、その肌は青ざめている。

血の気のない唇が、微かに動いた。

「どうしてだろうね?」