夜人【ヨルヒト】さん

「え……?」

身体の下で、ベンチがぎしっと鳴った。

プラスチック製のはずのベンチが、腐食してひび割れた木に変わっている。

ぽたり、とコップから音がした。

ゆっくりと、視線をそちらへと向ける。

コップの中から、緑色の藻が這い出していた。

震えるチサエの手を、ぬるりとした藻が撫でる。

「嫌ッ!」

叫び、コップを投げ捨てる。

石畳に黒く染みを作りながら、コップが転がっていく。

ぽたり、とまた音がした。

すぐ近くでしたその音が、ぼたぼたと連続した水音に変わる。