夜人【ヨルヒト】さん

「えっ?」

顔を上げる。

さっきまでの青空が嘘のように、どんよりと重い灰色に覆われている。

空を覆いつくす雲には僅かも隙間がなく、差し込む光もない。

息が詰まるような重圧感が、頭上に迫っている。

「やだ……雨かな」

呟きながら、プールの方を見る。



景色が一変していた。



リノリウム張りだったはずの床が、古びた石のブロックに変わっている。方々が欠け、隙間から生えた雑草がだらしなく横たわる。

真新しい飛び込み台の番号が、かすれて剥がれていた。

黒ずんだ手すりが、鈍く光っている。