夜人【ヨルヒト】さん

「あ……ごめん」

チサエが言うと、イサキは優しく首を振った。

水筒の蓋を外し、茶を注ぐ。

「麦茶だけど、いい?」

「うん、ありがとう」

受け取り、口に運ぶ。冷たい液体が、乾ききった口中を潤し、喉を心地よく流れる。

半分ほど飲み、息をついた。

「おかわり、あるからね」

おどけた調子で言い、隣に座ったイサキが水筒を軽く振ってみせる。

「水筒、持ち歩いてるの?」

「うん。水分をいつも摂らないといけないから」

傍らに水筒を置き、イサキが真面目な表情になる。

「何があったか……聞いていい?」