夜人【ヨルヒト】さん

(あのバカ女……ふざけてる。もっと痛い目に合わせないと)

がしゃん、と金網が鳴った。

僅かに息を切らしながら、イサキが入ってくる。

顔色が、さっきより悪くなっていた。

苦しげな顔が、チサエに弱々しく微笑む。

「大丈夫……だった?」

声を絞りだしたイサキが咳き込んだ。その右手には、銀色の水筒が握られている。

「えっ、走ったの……?」

「ん……少しなら、何とか……心配だったから、つい」

青ざめた額に汗を滲ませ、苦笑いを浮かべる。