夜人【ヨルヒト】さん

「出てこれる?」

緊張の糸が切れ、チサエはその場に座りこみそうになった。

「あっ……!」

少年が一歩踏み出した。大きな手が、チサエを掬い上げるようにして支える。

チサエはその身体に抱きついた。膝が震え、立っていられない。

抑えきれない嗚咽が漏れる。チサエは子供のように泣きじゃくった。

「怖かった……怖かっ……」

「落ち着いて。もう大丈夫」

髪を撫でられる感触が、チサエの恐怖に強張った心を緩めていく。

ひとしきり泣き、チサエは大きく息をついた。