夜人【ヨルヒト】さん

「……さすがに怖いね」

能面のように固まっていたユキオミの顔が、苦笑いを浮かべた。

「手に超汗かいてる。懐中電灯滑っちゃうよ」

おどけた口調で言い、パンツの腿で手のひらをこすっている。

つられて、トキコもぎこちなく微笑んだ。

(『生きている人間の方が強い』……)

ユキオミの言葉を思い出し、トキコはそっと深呼吸した。

(向き合わなきゃ……)

「手、繋げなくてごめんね。汗すごくて」

ユキオミが申し訳なさそうに頭を下げる。

「ううん、一人じゃないだけで心強いから」