夜人【ヨルヒト】さん

心臓が、胸の中で跳ね回っていた。痛いほどの衝撃が、身体の内側から伝わってくる。

(バイクで風に当たったからだ)

そう、自分に言い聞かせる。

ついさっき、自分を励まし、支えてくれたはずのユキオミの指が、ひどく冷たかった。

怯えているトキコの指先よりも冷たかった。

(死人のような……)

よぎりかけた言葉を、頭の中で必死に打ち消す。

「大丈夫です」

立ち上がり、トキコはユキオミの顔を盗み見た。

暗がりの中、下からの光にぼんやりと浮かぶ顔に、表情は読み取れない。