夜人【ヨルヒト】さん

母親の口からチサエが完全に這い出している。

音は、倒れた母親の身体が立てたものだった。

(…………!!)

「早く!」

ユキオミが叫んだ。

「……っ、うっ……」

足が震え、涙が溢れた。

トキコは目を固く閉じ、カーテンを掴んだ。

そのまま、空中へ踏み出す。

がくん、と衝撃があり、身体が宙へ投げ出される。

「キャアアアアア!」

次の瞬間、鈍い衝撃が全身を貫いた。

だが、予想したほどの痛みはない。