夜人【ヨルヒト】さん

「ト……キコ……」

ごぼ、と水を吐き出しながら、チサエが身を捩っている。

焦げた臭いが、不意にトキコの鼻を突いた。

床に落ちた布団が、奇妙に膨らんでいる。

先刻まで平坦だった部分が、人の形に盛り上がり、もぞりと動いた。

めくれた布団の端から、焼け爛れた手が覗く。

「ド……ギィ……ゴ」

硫酸に焼かれた喉から絞り出されるサナミの声。

「キャアアアアア!!」

トキコは絶叫した。

とめどなく悲鳴が溢れ、部屋の中に響き渡った。