夜人【ヨルヒト】さん

口調に抑揚がない。

ベッドの上で後ずさり、トキコは背後の壁に寄り掛かった。

「や……ぃや……」

母親が首を傾げた。ごき、と鈍い音が鳴る。

「トキコ。お友達は大事にしなさいっていつも言ってるでしょ。

人に与えたものは自分にがえ゛っ……でぐる……ぅ……」

声が不意に濁った。

母親の喉が不自然に膨れ上がり、顔がのけぞる。

「がばぁ!」

叫びとも悲鳴ともつかない音と共に、母親の口が大きく開いた。


藻の絡まった少女の腕が、口から突き出した。